圧迫骨折
圧迫骨折
今年90歳になった母は足腰が丈夫で最近までしっかり歩けていたのだが、先日夜中に布団から起き上がることが出来なくなり、仰向けになったまま私に両手を差し出し「起こして欲しい」と訴えた。身長153センチ体重48キロと、どちらかと言えば小柄な母だが、私が力いっぱい引っ張ってもびくとも動かない。
横向きにすると起こせると思ったのだが、母は「腰が痛くて横になれない」と言い、仰向けのまま起き上がろうと必死にもがき続けるし、私も母の手を引っ張るのだが、首と腰にトラブルを抱えているせいか思うように力が入らず、1時間以上かけても母を起こすことが出来なかった。
母も痛みで涙を浮かべているし、私も助けてやれないのが情けなくて二人で泣いてしまった。何としても私の手に負えないことが判り、救急車を呼び救急病院へ搬送してもらった。レントゲンを撮った後、若い医師は「骨には異常がないから筋肉痛だと思うので痛み止めを出しておく」と言った。
筋肉痛でこれほど酷い痛みが出るは思えなかったので、精密検査をしてほしいと訴えたのだが「その必要がない」と医師に断られた。納得できない思いが残ったが、それ以上は言えずに痛み止め薬の処方箋をもらって帰った。
しかし薬を飲んでも痛みは治まらず起き上がれない状態が続いたので、別の病院で診てもらったところ、老練な医師はレントゲン写真を見て「腰椎の圧迫骨折があるので、これは痛いね」と言い、即刻入院が決まった。
痛みを訴える同じ人物のレントゲン写真で、二通りの診断が出たわけで、これから増え続けると思われる、高齢者に多い圧迫骨折について考えさせられる出来事であった。